「ユニバーサルデザインの気づきとまちづくり」森崎清登(近畿タクシー代表取締役社長)

 1月24日標記のお話を聞いた。とても楽しい、有意義なお話でした。森崎さんはタクシー会社の社長であり、長田区ユニバーサルデザイン研究会の会長でもあります。
 ユニバーサルデザイン(以下「UD」という)に対する森崎さん自身の考え方と、それに基づく働き方生き方のお話でした。タクシー会社という特色を生かしながら経営にも社員にも世の中にもプラスになるアイデアを次々と実現しています。しかもそれは目先のコスト意識にとらわれない、現代の風潮に反旗を翻すような企画です。
 でもそれが長い目広い範囲でみると、必ず生きてくると自信を持っておられます。それがとてもいいのです。
 森崎さんが作ったタクシーは、①ロンドンタクシー(昔ロンドンで走っていたようなクラッシクカーー)②ユニバーサルタクシー(車椅子のままで乗車できる)③エコタクシー(燃料が環境に優しい)④スイーツタクシー(市内のケーキ屋を結ぶ)⑤かえるタクシー(子どもの送り迎え)傑作だったのは、神戸マラソンタクシーです。
 これは神戸マラソンが通るコースをタクシーで通り、お客さんが走りたいと思う場所で降りて少し走り、またタクシーで走り、次のいいところで自分で少し走るという、変なものです。
 こんなタクシーを誰が利用するのか、というと、森崎さんは「誰も利用しない」といいます。しかしこの観光タクシーをメニューに載せるとマスコミが取り上げてくれたそうです。それでもう十分で、これはお客さんというよりも、森崎さんの知り合いのお店に走っている人を見たら手を振ってくれと、頼んでいるそうです。これが神戸のおもてなし歓迎になるいうのです。
 この発想がすばらしいですね。
 「UD」とは、どんな人に使えるという思想に基づいて作ると、というものです。森崎さんはこんなたとえを出しました。年齢による人間の機能を折れ線グラフであらわすと、最初はゼロ(誕生)から右肩上がりであがり、ある地点(20代)からゆっくりと下がってきて、ガクッと下向きになりゼロ(死)につく。色々なものはある地点以上を対象に作られていて、「UD」はそれを引き下げるということ。だからそのものを使える人を増やすということで、利用者が増えるということは、商売として成り立つといいます。
 タクシーは「移動の困難を助けるもの」と考えると、「UD」そのもので色々とアイデアが出るといいます。しかも会社のHPに「あなたの考えるタクシーが実際に走ります」という形でアイデアを募集するそうです。3000件ぐらいの投稿があって、100件ぐらい読むとそこから使えそうなアイデアが出て来るといいます。
 人は役に立ちたがっているとも言いました。その気持ちが「UD」だと思いました。