『瞳の奥の秘密』『義兄弟』

 3月30日kobe・cinemaでみた。
 ここの番組は好きなのだが、上映時間の関係で仕事帰りにはいけない。もちろん2本見るためには休日か半日休暇をとらないと見ることができない。同じようにパルシネマも2本立てて行きたいのだが、なかなか時間をとることができない。
瞳の奥の秘密
http://www.hitomi-himitsu.jp/
 『瞳』は見たいと思っていて、パルシンでも上映したが見ることができなかったので、今回は無理やり休んで見た。
 なかなか良かった。期待はずれの面もあるが期待以上でもあった。何が期待はずれかといえば、もう少し国家や政治の問題が入っているのかと思った。期待以上は、謎が非常にうまく組み立てられていることと、大人の男女の恋物語がいい感じで織り込まれていることだ。タイトルが両方にかかるように作っているのも「うまい、座布団2枚」をあげたい。

 もう少し紹介したい。
 舞台はブエノスアイレスの裁判所で、一つの殺人事件をめぐる、現在と事件発生の25年前。アルゼンチンでは裁判所が捜査もするのだろう。主人公である判事補とその事務官たちが警察以上に活躍する。
 新妻が家で陵辱され殺戮された。その犯人の手がかりがない。ドアをこじ開けた形跡がないことから、親しい人間と推察される。彼女のアルバムを調べていくうちに、いつも彼女を見ている幼馴染が浮かんでくる。しかしその男は行方をくらませていた。
 その男の母親に送られてきた手紙を分析して、とうとう捕まえる。
この辺りは良くできたミステリー映画だ。しかしこの男が終身刑であるにもかかわらず、判事の判断で釈放される。その当時はペロン政権あるいは軍事政権で、軍部の力が強く、その釈放にもそこに背景がある。
 そして事務官の一人が虐殺され、もう一人も何者かのテロを逃れるために田舎町の裁判所に異動する。
 そして25年たち、彼は退職して小説という形で、再び真実を探ろうとする。軍事政権や対米従属の右翼政権は倒され、国家体制は民主化が進んでいる。
 そして意外な真実が明らかになる。
 こういう謎解きと平行して、判事補(女)と事務官(男)の心に秘めた愛情が、静かに交錯する、という面白さがある。タイトルは、殺人事件の犯人を探す手がかりでもあるが、この二人の関係をも明らかにしている。
『義兄弟』 
http://www.gikyodai.com/
 これは最近の韓国映画で、見事にハリウッド化しているなと思う。
 一人は韓国の対北朝鮮スパイ摘発の公安(ソン・ガンホ)、もう一人は北の潜入スパイ(カン・ドンウォン)、二人の宿命的な出会い、お互いに正体を知りつつもだんだんと通じ合う奇妙な友情を描く。彼らを引き裂く国家、「イデオロギー」(「北」のもの「南」のものの違いが何かが明確ではない、といつも思う)「分断国家」を背景にしていて、それでいながら、それをそんなに深く告発しない。

 ハリウッド的というのはその辺りのことで、大状況と、そのもとでの人間的葛藤、そして最後は大状況はやむをえないものとして、主人公たちは国家的な恩恵にあずかる。それを面白くリアルに、派手にドンパチやらかす。ソン・ガンホが芸達者なところを見せる。
 それだけの軽さ。