「キッズ・オールライト」「ロビン・フッド」「バーレスク」

 5月3日『キッズ・オールライト』5月4日『ロビン・フッド』『バーレスク』いやあどれもみんないい映画でした。
キッズ・オールライト』(監督リサ・チェロデンコ)は女性の同性愛カップルが、それぞれが同じ男の精子精子バンクから得て、子ども(男と女)を作って家族として暮らしている。子どもにはママが二人いるという家庭だ。

 これは現実にでもありそうな家庭だ。そこに精子提供者の男を登場させて、彼女たちの家庭の中に、彼が位置を持ちはじめ、いろいろな絡みが出てくる。
 さらには一方と「不倫」関係(子どもの「父」と母が性的な関係を持つ)にまで発展させる。それがばれて大騒動にという話だ。
 同性愛者の家庭であることが面白いが、一方が働き、一方は失業者であり「主婦」というところから、男女の家庭に相似した人間関係を見ることができる。子どもたちは普通に育っている。
 とても上手にできた映画で、3日は憲法記念日で私は9条護憲派だが、これを見たら憲法24条の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」というのは変えるべきではないか、と思う。
 昔、映画サークルで『セルロイド・クローゼット』というハリウッド映画が描いた同性愛について明らかにしたドキュメンタリーを上映した。あるいは『ブロークバック・マウンテン』という男の同性愛を描いた傑作もあった。それらと比べて同性愛に対して、アメリカは大きく変わっている。
 それにしても二人が性的刺激を求めて、寝室で見るDVDがゲイのポルノであるのは、レズのポルノが「ノーマルの演技」だからしらけるというのは、「そうなのか」とかと妙に納得した。
 『ロビン・フッド』『バーレスク』は新開地のCINEMA神戸で見たのだが、こことKAVC、パルシネマとあわせて、新開地に近畿圏でも特異な映画文化を作っているように思う。最近の映画館の文化的水準の低下(ハリウッドに偏っている、大手配給会社、ヒット作ねらい、館主の考え方がない等)の中でいい映画館が集まっている。「B面の神戸」でもっとアピールしたらいいと思う。ついでに福原国際もピンク映画の中の「工夫」というものがあればいいのに、と思う。これぞピンクの王道、という奴だね。
 CINEMA神戸は、画面も大きいし、椅子もいいし、何より空いているのがいい。しかしこのときは女性客もいたし、比較的入っている日だった。応援したいね。何とか月に1回でも行きたい。
 ところで映画『ロビン・フッド』(監督リドリー・スコット)だが、これはまったく素晴らしい。歴史観もあるし、空間的にもスケールの大きな話にしている。画面も良いし俳優もいい。特撮も効果的。と手放しのほめようになってしまう。

 ロビン・フッドは伝説の英雄だが、どこかに史実を踏まえているのだろう。映画でもズバリと描かれるが、イギリス王室に対する見かたや封建社会からの変化はエンターテイメントに厚みを与えている。
 比べてはいけないが、残念ながら『13人の刺客』はすべての面で負けている。ラッセル・クロウケイト・ブランシェットも素晴らしい。
 時代は12世紀のヨーロッパ。キリスト教会の指示で各国の王侯貴族が十字軍として、無為な戦争をした時代だ。十字軍といえば大昔見た『ブラザーサン・シスタームーン』を思い出す。
 そういう時代に、王室の権利を制限する思想が生まれたこと、そしてイギリス王室を卑しい人間と描く力はたいしたものだ。この前の王子の結婚式を天まで持ち上げるマスコミ報道とちがう。大ヒット中の『イギリス王のスピーチ』よりも、こちらの方が好きだ。あちらは事実で、こちらはフィクションかもしれないが、どちらが歴史の流れを踏まえているか、明らかだろう。
 『バーレスク』はショービジネスの世界で、ロサンジェルスのキャバレーが舞台。歌と踊りがとても楽しい。

 主人公が成功していく話が中心で、素晴らしい歌唱力が魅力的で、それ以上でもない。もう一つの筋は、このキャバレー「バーレスク」が不振で借金のために売られて高級マンションにされようとしている。これを解決するのが「空中権」を売ることだ。空中権などという都市計画の専門用語が出てくるのがうれしい。
 この映画が封切られたときに、映画館が映画サークルの例会でチラシを配ってくれといってきた。ちょっと露出オーバー気味の女の子がでかでかとあって、不似合いだな、と思っていた。