「ラテンアメリカの光と影:23世紀を生きる人々と社会」高橋百合子

 7月8日、7月例会『闇の列車、光の旅』の学習会です。神戸大学国際協力研究科の高橋先生に来ていただきました。表題の23世紀にはいささか驚きましたが「世界はラテン化する」という先生の見通しは、確かにそうなる、と共感しました。


 まず、先生のレジュメの見出しを列挙して、それから感想を記述します。
1.地球の裏側、ラテンアメリカとは?
−多様な諸相
−「光」と「影」
2.民主主義の浸透と好調な経済−「失われた10年」を超えて
3.不均等な繁栄の配分:移民の背景
4.米国におけるラテンアメリカ系移民
5.23世紀を生きるラテンアメリカ
−多文化融合・共生
−インフォーマル部門、犯罪の増加
−世界の「ラテンアメリカ」化?
 本当に面白いお話でした。ほとんど知らなかったラテンアメリカをぐっと近くに感じられるようになりました。
 まず広大な面積を持ち多様多彩な様相を持つ国々の集合、太平洋と大西洋、赤道直下と南極の近く、熱帯雨林アンデス山脈、砂漠と草原。そしてスペイン語(ブラジルはポルトガル語)、カトリックという共通文化がある、まことに興味深い地域です。日本から最も遠い位置にありながら日系移民が最も多いというのも奇妙ですね。
 先生のお話は、映画サークルの機関誌で報告されますから、個々ではそれを聴きながら私が感じた感想を書きます。
 まずアメリカ離れが進んでいることを感じました。先生は東西冷戦構造が終わったから「介入の正当性がなくなった」といいます。そしてラテンの国々は、チリは太平洋を挟んだアジアを見ているし、ブラジルはヨーロッパとアフリカに関心が向いているといいます。アメリカをはずした経済共同体作りも始まっています。
 元々アメリカがラテンの人々に介入する正当性などありません。私はチリのアジェンデ政権をCIAの力を借りたピノチェトが覆したことは世界史的な犯罪だと思っています。そして今でもCIA情報が国際的な信頼が高いと聞いて、米国の執念を感じます。
 しかし中米諸国は貧困が厳しく米国への不法移民が絶えません。その一方でハイチとキューバを除いたカリブ諸国は観光で豊かだと聞いて、やはりアメリカの大きさ、ラテンアメリカ諸国内部の貧富格差を感じます。ここは桁違いの大金持ちがいる地域です。
 左派が増えているラテン諸国ですがベネズエラ大統領チャベスキューバに少し距離を置いているのも、現実だな、と思います。社会主義に未来を見ることが出来ないのでしょう。ソビエトがつぶれ東欧諸国も「ソビエト社会主義」を放棄し、中国もベトナム市場経済を取り入れています。
 フィデルカストロキューバ革命の直後は、ソビエトでも中国でもないラテン型の社会主義を考えていたようです。それはアメリカの経済封鎖と武力的圧力、冷戦構造によって、あきらめざるを得ませんでした。
 だからワシントン・コンセンサスを捨て去った左派政権が目指すのは21世紀の社会主義だと、私は思っています。それは市場経済を利用しながら経済のコントロールです。
 そういったことはともかく、7月例会『闇の列車、光の旅』は中米の国を感じさせます。是非来てください。
http://www.kobe-eisa.com/
映画サークルのHPをご覧ください。