『フェア・ゲーム』『スリー・デイズ』『おじいさんと草原の小学校』

先週はこの3本を見た。いずれも面白いと思ったが『おじいさんと草原の小学校』が一番良かった。



 ケニアはサハラ以南のアフリカの有力な国だと思う。ですからこの映画がケニアの人々によって作られたものならよかったのにと思ってしまった。
 残念ながら監督や脚本家はイギリスで教育を受けた人や白人系である。製作国もイギリス資本だ。それでもいい映画はいい。イギリスは自らの恥「植民地主義」を明らかにしている。これはこれで立派な責任の取り方だと思う。
アフリカの夜明け
 ケニアは小学校の無償化を2003年から踏み切る。独立直後の1970年代にいったん、その制度を導入するが、それは財政問題から破綻し、再度アフリカの夜明けと共に、すべての国民に教育を与えるために無償化を実施する。
 日本でもそうであったが、教育は国づくりの基礎である。
 そこに84歳のマルゲが字の読み書きがしたいといって入学を申し出てくる。それは世界的なニュースとして広がる。しかし肝心のケニアの中では、必ずしも歓迎されなかった。
 その辺りは日本とまったく同じなのだが、やっかみと金儲け、そして何よりも卑しいのは自分と違う意見に対してはどんな手段を使っても潰すという人々がケニアにもいた。
 マルゲは「知は力なり」を心の奥に刻み込んでいた。だから84歳になっても学べる機会があれば、どこへでも行くと、草原の小さな小学校にやってくる。
 見る前は、山田洋次監督の『学校』の夜間学校の感じであったが、この映画はそれだけではなかった。ケニアの歴史を強烈に再現した。
歴史は現代と過去との対話
 マルゲはマウマウ団(これはイギリスが名づけた別称、ケニア人は「運動」と呼んだ)の闘士だった。ケニアのすべてを奪い取ったイギリスの植民地政策に対して、命も含め全てを賭して彼は戦った。イギリスはマルゲはもちろん彼の妻、こどもを奪った。そして彼らに協力して利益を得たケニア人もいた。
 彼が生き残ったのはなぜか。人間はなんと賢く残酷なのか。イギリスは彼の命を奪うことではなく、彼を屈服させることが、ケニアを叩き潰しケニアの生血を吸えることを知っていた。だからマルゲ自身への肉体の苦痛を与えることだけでなく、屈服を求めて彼の最愛のものを奪い取っていった。
 それを跳ね除けたマルゲには何も怖いものはなかった。この映画はそこを外していない。
 イギリスに協力した民族もいた。彼らはどれほどの地位を得ようがケニアの中には居場所はない。ケニアがイギリスからの独立を自らの力で勝ち取ったと自覚する限り、マウマウ団の闘士、彼らを生み出したキクユ族は全ての尊敬を受ける。
 マルゲはあらゆる局面で過去を思い出す。二度とあの時代に戻ってはならない、そのために自分は何をするべきか、自分に問うている。
 フェア・ゲームは実話にもとずく映画で、イラク戦争の嘘を告発し、そのために潰されたCIA職員、その夫である元大使の戦いを描いた。ブッシュ政権の過ちを高らかにいえるのはアメリカ映画の特性だ。


 イラク戦争当初、ハリウッド映画は戦争に向けてアメリカ全土を鼓舞する映画を作り続けた。それがここまで来た。イラク戦争の現場を告発する映画が作られ、大本の政治判断までも嘘にまみれていたことを明らかにした。
 『スリーデイズ』は痛快犯罪映画です。しかし本当は『フェア・ゲーム』と共通する愛妻家の映画です。


 無実の罪で刑務所に入れられている妻を、あらゆる手段によって奪い返す、愛妻家の映画です。映画は最後に彼の妻は無罪であることを匂わせますが、それは映画のテーマではありません。
 主人公はラッセル・クロウです。彼は妻の言葉を無条件で受け入れ無罪を信じます。そして彼女を救えることが出来ないと判断したときに、全てを投げ打ち、脱獄を企てます。そしてそれは成功するという映画でした。