『猿の惑星創世記』『マネーボール』

 残念ながら両方とも今一だった。せっかく期待して行ったのだが、ハリウッド映画もだいぶ質が落ちたと思う。これまでだったらもう少し切込みが深かったと思う。いうなれば脚本に金がかかっていないという印象を持った。
 さて猿の惑星創世記』は画像や猿の変装等はまったくすごいものだと思った。しかし人間を追い落とす猿の誕生が、医薬による遺伝子の突然変異というのが安易だった。


 人間の脳を再生させる研究、それがチンパンジーを使った医薬の実験だというのが、私には陳腐に見える。そしてそこからチンパンジーの脳を活性化させる薬が作られたという映画だった。
 アフリカから大量のチンパンジーが捕らえられてアメリカにつれてこられる。医薬の大企業研究所だ。企業だから、利益に結びつくような実験と研究だけをやっているという批判かとも思ったが、そうでもなく、それが人類を進歩させるといっているようにも思う。
 体系的な理論を作っていくというような地味な研究ではなく、脳に直接刺激を与えるような医薬が出来ないかという、それの実験ばかりをやっている感じがする。
 その辺りから私はしらけていた。頭の良くなった猿たちの反乱も感動的ではない。虐げられたものの怒りがあまり伝わってこなかった。
 『猿の惑星』シリーズは人間社会、現代文明を批判するところから始まったのだが、この映画は、それをまったく忘れてしまった、といっても過言ではないだろう。
 私は公言しているが広島カープのファンだ。例えこの先優勝しなくても、それは変わらない。願うのはいつも優勝争いに絡んでくれるチームに戻ってほしいと思うのだ。1980年代の夢をもう一度だ。
 そんなことを思いながらマネーボールを見たが、まったく失望した。
 弱小チームオークランド・アスレチックスを優勝争いをするチームにつくりかえたという「噂」を聞いて、その真髄に触れられるかと思ったにもかかわらず、その真髄が私が考える野球とまったく違ったからだ。


 私は端的に言えば西本幸雄監督のような選手を育てて、チームを育てる野球が好きだ。広島カープは貧乏で弱小球団だがそれだ。
 ところがビリー・ビーンのチーム作りはそうではなかった。確かに選手を評価する基準は独特のものだが、その基準に沿って選手を育てるのではなく、他球団から集めてくるというものだ。
 独特の基準だから、他球団では評価されていない選手を比較的安い給料で集めることが出来たということ。その選手が活躍したから、奇跡のように勝ち星をあげ、アスレチックスは上位に食い込んだ。ただそれだけだ。
 そのチームはファンにとって魅力的なチームになっただろうか。野球そのものが魅力的だったのだろうか。確かに勝利は選手もチームも魅力的なものにするだろうが、私はそうは思わない。
 結局ビリー・ビーンのチーム作りは野球界の新自由主義だと思った。