取り急ぎ、東日本大震災を振り返る本を読んでみた。もちろん、ここに並べた以上に多数の本、雑誌が出ているが、時間の制約もあり、私の好みの本を選んだ。短い感想を書きたい。
まず「3.11複合被災」(外岡秀俊、岩波新書)はすごい。著者が、10年後の中学生高校生が震災を知ろうとしたときに、読んでもらえる本をめざしたと、いうが、その迫力を感じる本であった。著者は、元朝日新聞東京本社編集局長だ。
なによりも足で稼いだ取材記事をもとに事実を並べて、一歩二歩と考察を積み上げて、この震災の本質に迫っている。非常にわかりやすいし、読むものに考えることを求めている。
しかも筆力がすごい。簡潔でいながら迫ってくるというやつだ。伊藤千尋さんがほめる新聞記者である。
目次を紹介しておこう。
Ⅰ 地震と大津波
第1章 無明の大地
1被災地へ/2類例のない複合被災
第2章 生と死の境
1避難と再開/2なぜ被害は拡大したのか/3日本列島と津波対策
第3章 自治体崩壊
1被災した自治体/2行政機能と喪失と広域被災/3自治体を支える
第4章 救援を急げ
1医療を支える/2救助・救援活動/3浮かび上がった課題
Ⅱ 原発被災
第5章 最悪の事故
1混乱の中の避難/2事故の推移と対応/3事故の原因と検証
第6章 原発避難
1原発避難の現実/2避難区域の設定/3自治体避難
第7章 放射線との闘い
1子どもたちの福島/2低線量被爆/3内部被爆と除染
Ⅲ 再生へ
1帰還への道のり/23・11―未来への原点
おわりに
という具合に長い紹介になったが、是非読んでほしい。「縦と横の『記憶の共有』が欠かせません」と書いてあるが、これはまさにそれを書き留めている。
「3.11を心に刻んで」(池澤夏樹、やなせたかし他28人、岩波書店)もいい本だ。30人の作家、学者、詩人、漫画家、医者等が、昨年5月以降から岩波書店のHPに綴った文章と、現時点での思いを述べた書き下ろしの二部構成になっている。
身近なところで、映画サークル例会学習会の常連講師になった感のある、岡真理先生も書いている。「『ナクバ』としての〈3・11〉」という見出しがついている。パレスチナに引き付け、世界中のナクバ(大いなる破局)思いを馳せている。我々は人間の命をもっと大切にしなければならなかったことを繰り返す。この過ちを繰り返してはならない。
文藝春秋は3月臨時増刊号で、世界は4月号だ。朝日ジャーナルは廃刊になった週刊誌で、「週刊朝日臨時増刊号」となっている。
中身の紹介は、ちょっと大変だが、エイやあでいうと、世界は生真面目、文藝春秋はちょっといい加減、というところか。
朝日ジャーナルは、それらと違っている。高橋源一郎に「もちろん、原発がない世界を目指しているけれど、そのためにいかなる手段をとってもいいとは思わない」と言わしている。あるいは朝日新聞の論説委員で原発推進に手を貸した大熊由紀子とフリールポライター鎌田慧の対決も面白かった。