2019年4月に見た映画

 


バイス』『ナディアの誓い』『記者たち 衝撃と畏怖の真実』『ディア・ハンター』『笑う故郷』『バグダット・スキャンダル』『こどもしょくどう』『アガサ・クリスティねじれた家』『ヒトラーVSピカソ奪われた名画のゆくえ』4月は九本の映画を見ました。

 ドキュメンタリーは『ナディアの誓い』『ヒトラーVSピカソ奪われた名画のゆくえ』2本です。

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 『ナディアの誓い』は、イスラム原理主義を標榜する過激派ISIS(イスラム国)にとらわれ、そこから脱出してきた女性ナディア・ムラドさんが、世界をまわり多くの人々に自分の経験を語ることで、自分と同じ目にあっている人々を救ってほしい、と言う行動を記録した映画です。

 彼女はノーベル平和賞も受賞しましたが、映画はごく普通の若い女性が語る姿を見せるだけです。そこに映像の力を感じます。

 ヒトラーVSピカソ奪われた名画のゆくえ』は第2次世界大戦時にヒトラーゲーリングの命令によってナチスが占領した国、地域の美術品を強奪し、ナチスが否定する前衛的な美術品を破壊、焼却したりしています。しかし終戦後も行くえ不明になったままの名画が多くある、それが元ナチス関係の画商の子孫から見つかったという、そのあたりを描いているのですが、どうもしっくりきません。まとまりを欠いているように思います。

事実にもとづく劇映画が『バイス』『記者たち 衝撃と畏怖の真実』『バグダット・スキャンダル』です。そしてこの3本は米国の映画でイラク戦争にかかわっているのです。

 『バグダット・スキャンダル』湾岸戦争の後、イラク戦争の前、国連はフセイン大統領の権限を制限してイラク国民を救済するプログラムを実施していましたが、二百億ドルの事業に群がる利権争いがありました。それに国連職員が関与していた、と告発しています。

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 それと時期的には重なっているのがバイス』と『記者たち 衝撃と畏怖の真実』です。イラクの石油を手に入れようと画策したチェイニー副大統領は「大量破壊兵器」をでっち上げて、マスコミと国民を戦争に誘導しました。それと闘った新聞社もあったと言うことです。その辺りのことを西神ニュータウン9条のHP(http://www.ne.jp/asahi/seishin/9jyonokai/)に書きましたので、これも読んでみてください。

 ディア・ハンターは1978年製作の再上映です。このとき見ていなかったので見ました。ベトナム戦争に行った3人のアメリカ人と彼らの故郷の人々を描きます。

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 この映画の肝は、彼等自身がベトナム戦争への疑問を持たないことと、映画もベトナム戦争の全体像を描かないことです。75年に戦争は終結していますし、米軍は73年に撤退しています。米兵の死者は約6万人、ベトナムの兵士、民間人あわせて300万人以上が死んでいます。

 これら時系列と事実から考えると、米国民を被害者としてしか描かないこの映画はおかしいと思いました。

 この映画の見た目の衝撃は、1発の弾丸を込めたリボルバー拳銃を自分のこめかみに当てて引き金を引くロシアンルーレットでしょう。戦争に徴兵された3人の若者は、ベトナム軍の捕虜になってロシアンルーレットを強制されたことで心身ともに破壊された、と描きます。

 注意書きで「ロシアンルーレット」はなかった、と出てきますが、これがベトナム戦争の狂気を象徴しているというのであれば、米国政府がロシアンルーレットを国民に強要したと描くべきでしょう。

 若き日のメリル・ストリープが出ているのが目を引きました。

 『こどもしょくどう』は邦画です。街の小さな食堂の夫婦が、親に放置され見捨てられ遺棄された子どもに無償でご飯を食べさせる、という話です。

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 無邪気で落ち込む子どもをみていると泣きそうになります。しかし親の状況を描かないのはなぜか、と考えます。いかなる理由があれども子どもを捨てるのはダメということかもしれませんが、政治や社会の責任を拭っているようで、ちょっと面白くありません。

 アガサ・クリスティゆがんだ家』もダメでした。彼女の小説の特徴ですが、社会的な背景を描かず、ただ意外な犯人というだけでは、ミステリー映画としての面白さがありません。

 笑う故郷は市民映画劇場4月例会でした。この映画の率直な感想は「ちょっと難しい」です。見ていない人のために簡単に紹介すると、ノーベル文学賞をとったスペイン在住の小説家が、40年前に出てきて一度も帰っていない故郷、アルゼンチンの片田舎の町から名誉市民の称号をもらい、その式典に出るために帰ってくる、その時のドタバタ劇、という映画です。

 最初にノーベル授賞式を描き、この小説家はとても辛辣な皮肉屋で虚栄心も強い、一言でいうと人が悪い、と紹介するエピソードがあります。

 出迎えの車がパンク、消防車によるパレード、パラパラの講演会、元恋人とその亭主そして子ども、絵のコンクール等々、お互いの「良い人」の仮面がだんだんと剥がれてきます。

 その様子が笑いを誘うのですが、私は「でどうなの」と思っていました。ですがラストシーンで映画全体の種明かしをして、ニヤリとさせるのです。