2022年7月に見た映画

『ベイビー・ブローカー』『コットン・ダイヤリー』『マヤの秘密』『特撮部Q知りすぎたマルコ』『みかんの丘』『ブラックボックス音声分析捜査』『ゴヤの名画と優しい泥棒』『戦争と女の顔』『リフレクション』9本でした。よく見ました。そしていずれも面白い映画でした。

『ベイビー・ブローカー』

 いい映画です。でも是枝監督が韓国で撮る理由がわかりません。日本でもできると思いますが、資金を出してくれるところがないのでしょうか。

 教会に捨てられる赤子を連れ去って、子どもが欲しい夫婦に売るという商売をしている二人組が主役です。そこに子供を捨てた母親が加わって、さらに彼らを追っている女刑事の二人組が絡みます。

 孤児院の子どもや、彼らを追う暴力団まで出てきて、珍道中のように韓国全土を走り回る話でした。

 ちょっと焦点がぼけたように思います。捨て子、人身売買等の痛みがあまり感じられませんでした。もっと矛盾が鋭くなるような脚本に練ったほうがいいとおもいました。

『コットン・ダイヤリー』

 甲南女子大生の卒業製作、コロナ禍で就職活動に悩む自分とその周囲の人々を撮ったドキュメンタリーでした。ドキュメンタリー作家の池谷薫さんが指導教授です。

 短くて、素直な悩みがさわやかでした。

『マヤの秘密』

 一言では言えません。ナチスの犯罪を告発していますが、見方によれば人間の恐ろしさを描いた映画だと思います。

 第2次大戦後の1950年代末の米国の田舎町、米国人の夫と結婚し、子どももできて平穏に暮らしていたマヤは、ある日、自分を凌辱し妹を殺した元ナチスドイツ兵を見つけました。

 彼女は一目見て「この男」と分かりましたが、誘拐して拷問にかけても、男は「違う」と言い張りました。マヤの亭主は半信半疑ですが拷問に加担します。

 男は頑強に否定し続けます。男の妻にも接触しますが、ドイツ兵だった証拠は出てきません。見ている方も「まちがいでは」思うようになります。

 しかし、男は最後にドイツ兵であったこと、マヤたちを凌辱したことを白状しました。そして殺されました。

 被害者の復讐の深さなのか、あるいはマヤ自身が何をしたのか、本当のことを知りたいのか、恐ろしい怒りと執念が描かれました。

 彼女はロマの出自で、ナチスドイツに酷い目にあわされ、妹は殺されたことも、夫に告白しました。そんなことを忘れて、普通の生活をしていれば平穏に暮らせるにもかかわらず、そうしたのです。

『特捜部Q知りすぎたマルコ』

 デンマークの人気ミステリー「特捜部Q」シリーズの5作目です。私はこれが初めてなのですが、確かに面白そうな警察ミステリーです。ですが、とても複雑に絡み合ったストーリーで、登場人物をわかっていないと付いていけません。

 未解決事件を捜査する特捜部Qのカール警部補(日本のミステリーにも出てくるちょっと変わり者の刑事)が主人公です。

 小児性愛者の疑いをかけられて失踪した公務員を捜すのが、任務です。この公務員はデンマークのアフリカ支援プロジェクトの不正を追っていたことが分かりました。

 もう一方で、密入国で捕まった少年マルコは、その公務員のパスポートを持っていました。少年は何を知っているのか、カールは謎を追ってがむしゃらに突っ込んでいきますが、巨悪の片鱗が見えてきました。 

 北欧社会の一面が見える面白い映画でした。