2023年1月に読んだ本

『卑怯者の流儀/深町秋生』『八月の遺書/能島龍三』『映画で読み解く「世界の戦争」/佐藤忠男』『ちょんがれ西鶴浅黄斑』『世界1月号』『前衛1月号』4冊の本と雑誌2冊でした。

 深町は2022年に読んだアンソロジーから面白いと思い、能島は旭爪あかね以来、プロレタリア文学も読んでみよう思ったのです。『映画で読み解く「世界の戦争」』はずっと前に買った本をたまたま見つけてしまったので読みました。『ちょんがれ西鶴』は西神ニュータウン9条の会で知り合った浅黄斑さんが亡くなったので、追悼で読みました。

『卑怯者の流儀/深町秋生

 昔は優秀であった警視庁の刑事、米沢英利が主人公です。彼は、ヤクザからお金をもらう関係で、生活もだらしない悪徳警官ですが、能力は衰えていません。なぜそこまで自堕落になったのか、微かにわかります。平刑事で小悪党の彼と上司や同僚に面白い人物を配して物語を書いています。

 6編の短編集です。

『野良犬たちの嗜み』

 古くからの付き合いのあるヤクザが、行方不明になった自分の女を捜してほしいと依頼がきます。すぐに殺されているのが分かりますが、復讐の手だてに米沢が協力し、ヤクザは死ぬという、破滅的です。

 でもこれに新味を感じて深町を読みました。

『悪党の段取り』組織対策課のエースが、米沢に近づいてきます。

『はぐれ者たちの成熟』10年前にムショに送ったチンピラ。

『秘めたる者らの殺気』米沢の金つるの男。

『策略家の踊り』米沢が標的になる。

『生き残りの騙り』その続きで、彼をはめた女の正体。

『八月の遺書/能島龍三』

『怪談』『劇場にて』『碧落の風に』『青の断章』『永訣のかたち』『分断の系譜』『母の初恋』『八月の遺書』『解説 原田敬一』という短編集です。

 主にアジア太平洋戦争の前後の話です。しかも能島さんの父と思われる方が出てきます。息子と相反する考え方の持ち主で、二人の距離感が結構面白いと思いました。

『映画で読み解く「世界の戦争」/佐藤忠男

 随分前に買っていた本を改めて読みました。副題に「昂揚、反戦から和解への道」とあります。佐藤忠男は好きではないのですが、若い時は惹かれていました。

 やはり失望しました。読んでいて映画の評価、世相の見方などおかしいなあ、違うと思うところが多々あるのですが、全体的なところも看板倒れです。

 「世界の戦争」といいながら、全体200頁ほどの中で、中近東の映画は10頁ほどで、あとは日本、アメリカ、ヨーロッパの映画で、とても「世界」まで手が回っていません。

 特に中国、韓国、アジア諸国がアジア太平洋戦争をどのように描いたかに触れていません。

『ちょんがれ西鶴浅黄斑

 浅黄斑さんは西神中央に在住する小説家で九条の会の発起人でもありました。何度かお会いし、一緒にお酒も飲みました。非常にやさしい物言いの大柄な紳士でした。

 『きょうも風さえ吹きすぎる』という新開地を舞台にした探偵小説を読んでいました。これはハードボイルドの傑作です。しかし他の本は読んでいませんでしたので、図書館にあったこれを読みました。

 元禄時代、若き日の井原西鶴、藤五と呼ばれていた時代を書いたもので、父と一緒に江戸に下るところから始まり、大阪に帰ってきて偽作者として活躍し始めるところで終わります。

 藤五が全く知らぬところで、父が殺人事件に巻き込まれて殺されるのですが、そちらの関係者のその後の展開も描くという、二本立ての物語でした。

 さらに藤五の遠縁の河内の庄屋連中が係わる、大和川の河替えと言う大事業の変遷も織り込んで、話はあちらこちらにトビながら行きました。

 面白いのですが、肝心の西鶴はわずかでした。「ちょんがれ」はちょんがれ節の略で浪花節の前身です。

『世界1月号』

特集1「経済停滞 出口を見つける」

特集2「アメリカの憂鬱―2024年大統領選の焦点」

『前衛1月号』

特集「危険盛土・有害残土から住民を守る」