「『国際競争力』とは何か」友寄英隆

 本の題名と著者を見てすぐに買いました。中身は期待通りで非常によかったと思います。
 日本はあらゆる面で「国際競争力」という言葉を使うと、無条件で大事であり、それを高めることが必要であると考えるものだと思います。
 しかし「国際競争力」とは何か、それを高めるにはどうすればいいのかということをきちんと解明したものはないように思います。いわば、財界が「賃金が高い」という時、農業保護を批判するときに、よく出てくるように思います。
 それは何を意味するのか、ということと、私たちの生活や日本の未来にとって、何が必要か、どういうことを考えたらいいのか、に答えてくれます。
序章 「国際競争力」の定義は、ファジーで、とらえにくい
 スイスの国際経営開発研究所(IMD)が国レベルの「国際競争力指標」をだすが、これは企業の「ビジネス環境」であって、国民の幸せの順位とは関係ない。むしろ企業活動しやすいことと労働者の幸せと正比例ではないだろう。米国の「ニューズ・ウィーク」誌が「国民の幸福に関わる5つの側面―教育、健康、生活の質、経済活力、政治的環境―に着目し、それぞれについて100カ国の点数を算出」してNW誌なりに順位付けたものを出しました。
 それをみるとIMDのものとかなり違ってきます。IMDで1位のシンガポールはNW誌では20位になり、逆にフィンランドが19位から1位になっています。 
第1章 「国際競争力」をどうつかむか
第2章 日本財界の「「国際競争力論」の陥穽
第3章 日本の科学・技術政策と大学の危機
第4章 「法人税率引き下げ競争」の悪循環、その限界
第5章 TPPと東アジア共同体