「しゃぼん玉」「きのうの世界」「流星の絆」「野村学校の男たち」

 今月は図書館で借りた本をよく読みました。収穫は乃南アサの「しゃぼん玉」でした。彼女は直木賞も受賞しています。私も女刑事・音道貴子や新米刑事・高木聖大シリーズの何冊かも読んでいます。確かにちょっといいな、と思ったのですが、今回「しゃぼん玉」を読んで確信しました。彼女はいい。
 これは、それほど目新しいテーマでもないし、ミステリーというほどの仕掛けがあるわけでもない、不良が更生する話です。都会でつまらない犯罪を繰り返していた男が、ふとした拍子でど田舎暮らしを始めて、周りの年寄り連中と付き合っていくうちに、人生の何たるかに気づくという、よくある話です。なぜ、これにひかれたのか。ちょっと彼女を読んでみます。
 「流星の絆」は東野圭吾で、これはもう当たり前に面白い。図書館に帰す日が迫っていたので、一気に読み上げました。
 15年前に両親を殺された兄弟3人が犯人らしき男を見つけて、という展開は「次はどうなるのだろう」と頁を繰る手が早くなります。最後はちょっと意外な犯人、それでいて納得するような仕掛けになっています。
 出てくる人間がいい人間ばかりというのは、ちょっと気になりますが、おもしろい。
 「『野村学校』の男達」は永谷脩ルポルタージュで、野村克也とその教えを受けた37人の男たちを書いています。永谷はあとがきで「高度成長期に日本を支えていたのは、官僚でも、エリートサラリーマンでもない。第1次産業に従事していた7割のブルーカラーであった(「2次」のまちがい?)」と書いています。そういう視点を持った本です。
 結局は選手やコーチの目から見た野村克也なのだと思いますが、彼はどこまで行っても、己の腕と頭で生きてきた男であり、それを生かせれば、そこそこになれる、ということを実証して見せた男です。
 そのチームの主軸ではなくても気になる選手がいましたが、それがこれを読んで、野村教室であったとわかりました。土橋勝征です。彼は代打であったり4番を打ったりできる「使い勝手の良い」選手でしたが、それが野村の教えだったのです。
 私が尊敬する西本幸雄さんとは少し違いますが、いい監督です。
 恩田陸きのうの世界」はSFタッチのミステリーですが、私はあまり評価できません。たくさんの人間を出してそれぞれの視点から事件を検証するのは面白い構成ですが、全体としてそれが成功しているとは思えません。
 水の上に浮いた町というのは、面白い発想ですが、それが生かされたと思えません。