神戸演劇鑑賞会『くにこ』

 今年最後の芝居は、23日に小説家・向田邦子の半生を描く『くにこ』を見ました。向田邦子の小説「思い出トランプ」は絶品でした。最後の短編集「隣の女」他も読みましたが、男と女の関係を、この芝居で言う「表と裏」で見て、一筋縄で行かないけれどもいとおしい人々、という風に描きました。ラジオドラマから始まって、小説やテレビ、映画で描きました。森繁久弥竹脇無我の「だいこんの花」も彼女の作品です。


 テンポ良くまとめられた、面白い芝居でした。ところがそれ以上に何が残ったかを考えると、思い出せません。
 彼女が生きた戦前、戦後の日本はあまり深く描かれず、むしろ、その時代の女の生き方から一歩も二歩も先を行く向田邦子の特異さが残りました。
 そういう芝居だといえば、そうですが文学座は、そんな芝居でいいのかと思いました。