アルゼンチンのデフォルト

デフォルトの経緯
映画サークルの9月例会『幸せパズル』はアルゼンチンの映画です。その担当となった私は、アルゼンチンのあれやこれやを調べていました。その時、アルゼンチンが再びデフォルト(国債の利払い不履行)に陥った、というニュースに出会いました。
これはどういうことか、アルゼンチン経済は順調と思っていたのに、なぜ?と色々と調べるうちに、状況がわかりました。
アルゼンチンが2001年に1000億ドルのデフォルトに陥ったときに、多くの債権者に減額を求めました。92%は7割の減額に応じましたが、米国の「はげたかファンド」がそれに応じなかった債権を買い占めて、アルゼンチンに全額(13億3千万㌦)支払うことを求めて、米国の裁判所に提訴していました。そして今年の6月に米国の最高裁が「はげたか」ファンドの要求を認める判決を下しました。
アルゼンチン政府は交渉し「公平、公正で合法的な条件であれば返済する」と言ってきましたが、交渉は決裂して、7月末が期限であったのでデフォルトとなりました。
日本のマスメディアの見識
新聞やテレビは、まったくこのような経緯を報道しません。アルゼンチンがデフォルトしたと言うだけです。
私はインターネットで情報を色々調べて、その全体像に辿り着きました。そして[赤旗]が8月1日にそのような解説をし、8月2日「ノーベル賞経済学者ら100人 米ファンド擁護を批判」と言う記事を出しました。
それは、100人を超える高名な経済学者が、米国最高裁の判決は「モラルハザード」を招くと批判し、国際金融市場への悪影響を緩和する法的措置をとることを求める連名書簡を、米国議会に送った、というものです。
米国「はげたか」ファンドの要求を認めることは、話し合って妥協した他の「既存の合意まで破壊する」を批判しています。
国際的な金融秩序の方向
雑誌「エコノミスト」8月12日号は、詳しい解説を乗せていますが、アルゼンチン政府と「はげたかファンド」の主張を同列に扱っています。しかし、その記事でさえソブリン(政府・政府機関債)の破綻に対して交渉に応じない債権者が有利になることは、今後の、そういうデフォルトが生じた場合、債権者との交渉が進めにくい、という懸念を、国連開発会議が表明した、と言っています。
グローバル経済が拡大し、国際金融の操作によって莫大な利益を上げている「はげたか」ファンド、これの主張を認めることは、全ての国の普通の人々にとって、不利益になると明確に言ってほしい、と思います。
それ以上に[毎日]8月4日社説はおかしい。
「アルゼンチン」と言うタイトルで、見出しは「混乱を防ぐ法的枠組み」ですが、「エコノミスト」より弱腰です。
「しわ寄せを受けるのは、弱い立場の国民だ。アルゼンチン政府は、ヘッジファンド非難に逃げず、早期解決に向け、知恵を絞らなければならない」とアルゼンチンには注文をつけますが、「はげたか」ファンドも、その要求を認めた米国裁判所も批判せず、今回のことは「有効な取り決めが存在しない」からだと逃げます。
わずかに、過去にそういう取り決めが提案されたが米国の反対で実現しなかった、とまでは言います。
米国裁判所が間違っていると、なぜ言わないのか。「はげたか」ファンドを批判できないのはなぜか、わかりません。