『ガラパゴス』『デフォルト』『ともにがんばりましょう』『血縁』『プロ野球重大事件』『采配』『教えない教え』

1月末から3月にかけて読んで面白かった本を紹介します。
ガラパゴス』『デフォルト』相場英雄
すっかり相場英雄にはまっています。
ガラパゴス』は上下2巻ととても長い推理小説ですが、割と早く読みきりました。展開がとても面白いのです。それと殺人事件の社会的背景の切り取り方と批判が、私は好きです。

これは派遣社員の「自殺」と処理されていた殺人事件の真相を明らかにしていくミステリーです。捜査の本流から脇に置かれていた優秀な定年前の刑事が、薄皮をめくるように、わずかな証拠物件から疑問をあぶりだし、事実に迫っていく姿は「いいなあ」と思います。
現在の話で、刑事と同世代すから、彼が思う人間性への疑問や現代社会への批判は共感します。背景には非正規労働が4割に迫る働き方があり、その働き方の根底を決定つけた財界の経営感覚、自動車産業や電気産業における経営方針を批判します。
『デフォルト』はもう少し短いのですが、こちらは金融界、銀行、日本銀行財務省に巣食う悪に復讐する話です。もちろん小説ですから「そんなにうまく行くの」と言う筋立てですが、最初に「まっとうな生き方」をしていた労働者(ホワイトカラーですが、使われる身、権力側ではない人々)が、苦しめられ、ついに自殺者まで出す、と言うところから始まります。
『ともにがんばりましょう』塩田武士
これは労働組合の青春ドラマで、とても面白く感動的でもあります。ミステリーではないです。

地方新聞の労働組合の執行部に引き込まれた気弱な青年が、秋季年末闘争を経験することで人間的にも成長し、彼女も手に入れると言うお話です。
ボーナスと深夜勤務手当てを巡って、経営側と執行部が団体交渉するというのがメインになっています。私も労働組合の役員を経験していますから、その雰囲気は分かります。
タイトルは労働組合の集会の締めくくりの合言葉です。「団結ガンバロウ」ですね。
傑作です。
『血縁』長岡弘樹
短編集です。相場英雄と違って社会的な背景は取り立ててありません。そこそこ面白いです。でもいちばん最初に読んだ「傍聞き」を超えるものではないです。
以下、プロ野球関係の本3冊も読みました。
プロ野球重大事件−誰も知らない”あの真相”』野村克也
『采配』落合博満
『教えない教え』権藤博