GDP年率6.8%減

久々に同日の[神戸][毎日][朝日][讀賣][日経][赤旗]を読み比べました。標記の記事が載った13日夕刊と14日の朝刊です。
赤旗]を除いて、大体同じ傾向ですが、微妙に違います。特に今後の動向については、社説に、安倍政権に対する新聞の姿勢が出ていたように思います。
まず標記の意味ですが、内閣府が13日に発表した今年4月〜6月期の実質国内総生産(GDP)速報値1.7%減の年換算です。いずれもこれだけの経済の落ち込みに、危機感をもって書いていました。
どの程度の大きさの落ち込みかと言うと、東日本大震災時(2011年1〜3月期)が年率6.9%、前回の消費税増税時(1997年4〜6月期)が3.5%でした。それらと比べても大きいと言うことです。
とりわけ個人消費は1994年以降で最大の落ち込みです。
これまでの動き
GDPは1〜3月期は消費税増税に伴う駆け込み需要で年率6.1%増の高い伸びを示したが、その反動で4〜6月期は個人消費が不振で、輸出や設備投資も低調であったことから、こういう数字が出た、ということです。
そして、安倍首相が消費税を10%へ引き上げる決断をするのための判断材料が、7〜9月期のGDPですから、これがどうなるのかが大きな関心の的になっています。
それを占うために、これまでの経済的指標と動向を各紙が分析し評価しています。
政府と財界は強気だが
想定の範囲内」というのが、政府や財界の見方で、[讀賣]は7〜9月期は「かなり上昇する」「次第には反動減の影響が薄れ、緩やかな景気回復が進む」(甘利経済財政相)、「1月〜6月でならすと前年10月〜12月より成長している」(安倍首相)を紹介し、証券関係者は明確な根拠も示さずに3〜4%の成長と言っています。
讀賣]の記事は、金融危機アジア通貨危機が重なった97年と比べて「金融機関の体力に問題はなく、アベノミクス効果で企業業績も好調だ。失業率の低下と言った雇用環境の改善など好材料がそろっている」書いています。
と言っても自信があるわけではないようです。
14日の記事の見出しが「個人消費回復鈍く」「経済対策求める声も 先行き見方分かれる」となり、社説の見出しも「消費回復の後押しが必要だ」と書いて、個人消費も設備投資も低調で、「内需のけん引役が見当たらない」が、法人税減税、原発再稼動を進めて、いまさらながら「産業空洞化など構造的な要因の分析も急がなければならない」とまとめました。
支離滅裂です。
なんとしても消費税10%へ
その点[日経]は立派です。[讀賣]と同じく政府や市場の見解を追認しながら(12社に7から9月期成長率見通し4.4%を出させた)、14日の記事の見出しは「景気、緩やか回復続く 設備投資増加へ 消費は強弱混在」と書き、社説の見出しも「『反動減』後の経済の回復力が試される」と前向きです。そして消費税10%への環境づくりです。
1面のリード文で「日本経済は年後半にかけて緩やかな成長軌道に戻りそうだ」といい切ります。個人消費についても「消費増税と物価上昇で実質賃金は前年割れが続くが、夏のボーナス増や大企業を中心とした賃上げ、人手不足による時給の上昇で所得環境は徐々に改善する見通し」と給料が上がるようなことを書いています。
外需による回復は無理で「景気が回復軌道に戻るかどうかは、好調な企業収益が雇用や賃金の改善を後押しし、個人消費や設備投資に波及する好循環がどれだけ持続するかにかかっている」と、すっかり労働者の味方です。
明快に家計へ
[毎日]の見出しは「消費回復足取り鈍く 『消費税10%』にハードル 次期伸び率判断目安」「輸出不振けん引役不在 成長戦略実行がカギ」と書きます。社説の見出しは「消費回復がカギになる」とシンプルです。
政府の見解を載せていません。今後の景気回復では、ここも「工場の海外移転を進めたため、円安になっても輸出が増えない構造」で外需に期待できないと書いています。
社説では「給料が目減りし、財布の紐が固くなっている」「アベノミクスは・・・企業業績のてこ入れを進めたが、家計の底上げは後回しに」「大企業は今春、15年ぶりに2%を越す賃上げを実施した。だが、非正規社員や中小企業の従業員に賃上げは浸透していない」「公共事業中心の旧来型の財政支出は効果が薄い」「今は家計への決め細やかな目配りが必要な時だ」と、明快です。
230兆円の手元資金
[朝日]も大体[毎日]と同じ論調です。見出しは「政権再増税へ試練 GDP年率6.8%急減 7〜9月期回復見込み維持」となっています。[朝日]も[毎日]も社論は消費税増税推進派ですが、このまま増税を実施するべき、とまでは書いていません。「消費増税で景気が失速すれば政策判断のミスも問われる」と言います。
社説は「『民間主導』へ正念場だ」とちょっと曖昧な見出しです。鉱工業生産指数もダメ、円安でも輸出もダメ、設備投資もダメ、家庭も「給料やボーナスが上がっても、物価の上昇に追いつかない」のですが、「肝要なのは、民間が主導する自立的な景気拡大である。個人の消費は賃金に左右されるのだから、カギは企業が握る」「企業全体を見渡すと・・・業績は良い。現金・預金だけで230兆円もの手元資金を溜め込んでいる」とまで書き「企業の力量が問われる」とまとめています。
やっと具体的な内部留保の額を書いています。
増税に言及
[神戸]は消費税増税に批判的です。見出しは「首相難しい再増税判断 (財務省強気)『1〜6月では成長』(官邸は慎重)景気中折れに警戒感」として、他紙と違って、再増税問題での財務省と官邸のやりとり等を詳しく報じています。首相ブレーンが「増税は延期すべきだ」と言ったと書きました。
社説は「アベノミクスの正念場だ」と言う見出しです。内容は[日経][毎日][朝日]と同様に、労働者の賃上げを強調しています。「上場企業の業績は、輸出関連産業を中心に堅調を保っている。企業が利益を溜め込まず、従業員に還元できるかどうかが、今後の景気を左右する鍵になるだろう」と書きましたが、内部留保の額を書くべきです。
はっきりした景気対策
讀賣]は原発法人税減税で景気対策が出来ると言っていますが、それ以外は、今後の景気回復、維持していくには賃上げしかない、という強い論調であると思います。
しかし現実は、国家公務員の人事院勧告を見ても、給料もボーナスも引き上げるという、最近にない勧告でしたが、各紙が分析したように実質賃金は物価高に追いついていないものです。しかも給与制度の見直しで、地方公務員も含めた賃下げの方向性を出しました。
何たる馬鹿さ加減か。
なお[赤旗]は明快です。「消費是増税暮らしも経済も直撃」「「経済壊した安倍暴走 消費税10%は中止を」です。そして「『経済の基盤』弱体化鮮明」と言う見出しの中央大学名誉教授今宮謙二さんの談話を載せています。
そうです。今後の経済の動き、景気の動向は基盤がどうなっているかと言うことです。他紙も雇用関係に触れていますが、今宮先生は中小企業、地方経済、農林水産業など全体破壊しているとばっさりです。