図書館で借りた本

 小説の類は、基本的に図書館で借りて読むことにしています。急いで読まないといけないものしか買わないようにしているから、そうなります。毎月10冊ぐらい借りて読破できるのは多くて半分までで、あとはそのまま返すか、気になるのはもう一度借ります。
 今月は、めずらしく新たに借りた本を3冊読み通しました。少し紹介します。
「天使のナイフ」薬丸岳  第51回江戸川乱歩賞(平成17年)です。平成に入って以降は桐野夏生ぐらいしか読んでいませんが、受賞者は当代一流の書き手がそろっています。
 これは、そこそこという感じのミステリーで、謎解きよりも少年犯罪について、制度に対する批判を加害者、被害者の両側から見ていきます。
 主人公は妻を少年たちに殺された男です。少年たちに対する怒りを持ちながら、その妻の謎が明らかになっていく中で、彼の考えが変わっていくのがいいです。
 しかし少年少女の犯罪を小説の題材にするのは、その動機付けが単純である必要があるから、難しいと思いました。
「魔女の笑窪」大沢在昌  大御所ですから、安心して非常に面白く読みました。新宿鮫シリーズも堪能しています。キャラクターつくりがいいですね。
 これは、たまたま先に続編の「魔女の盟約」を読んでいて、非常に面白かったので、前作も読もうと狙っていました。期待通りです。
 主人公「水原」は、九州の売春窟「地獄島」から抜け出し、男を見抜く能力を持った女。これは連作の形で彼女に持ち込まれる厄介な仕事を綴りながら、地獄島と彼女の出自にまでたどりつく。
 裏社会とそこに生きる男たちは、生き生きと描かれている。
「海坂藩の侍たち」向井敏
 「藤沢周平と時代小説」という副題がついている、藤沢周平の評論です。率直に言って私はファンですから楽しく読みました。
 小説家としての力量はずば抜けていて、時代や状況を超えて、彼が描く「普遍的な人間」の姿が好きだ。